宮部さん好きの中でも、これは楽しかったです。
田辺書店のイワさんと孫の稔のお話。
この二人を中心にして、いろんな事件が起こっていきます。
どちらかというと、サスペンス的なものではなく、人情的です。
二人のやりとりがとても素敵で、ホッとさせてくれます。
六編に分かれた短編集ですが、サクサク読めます。
お勧めは『歯と爪』と『うそつき喇叭』でしょうか。
大きなコトではないのですが、ちょっとした謎かけによって、
事件が解明されていきます。
イワさんと稔のやりとりを読むだけでも面白い作品です。
これは宮部さんの中でも私のランキング上位に来る作品です。
龍は眠る 宮部みゆき
宮部さんの中でもちょっと珍しい超能力を題材にした作品です。
主人公はちょっと過去がある雑誌記者の高坂。
台風の中に出会う少年、稲村慎司との出会いによって、
不思議な体験に巻き込まれるお話です。
これを読むと、超能力って実在するのかって思います。
まあ、今は超能力よりマジックのほうがメジャーになってしまったので、
超能力番組とか減ってますよね。
慎司という人物を調べていくうちに、平行していた事件に巻き込まれます。
また慎司の友達の直也、超能力があるために苦悩する思いが考えさせられます。
現代の少年たちも、超能力がないとはいえ、同じような思いに悩んでいるのでは。
そして高坂が出会う聴覚障害の女性の出現により、
その苦悩する重い話に、そっと安心という花を咲かせてくれます。
最後は、思ったとおりになりましたが、泣けますね。
やるせなさが残るところもありましたが泣けます。
破滅的な要素も多い中、主人公高坂と同僚の掛け合いがとても面白いです。
思わず読みながら喫茶店で吹き出してしまいました・・・。
ABCD殺人事件 赤川次郎
初めて読みました。赤川作品。
思ってたのと異なってました。
もっと、ガチガチの作品だと思ってたのですが、ゆるーい感じでした。
これは中学生くらいでもOKな作品ですね。
三毛猫ホームズとかもこんな感じなのかな?
さて、これはシリーズモノでした。
大貫刑事という傍若無人な刑事と井上刑事、井上の恋人直子が出演します。
タイトルの他に真実一路」「天地無用」「無理難題」の3作が入ってます。
このシリーズは、面白いです。全部読みたくなりました。
子どものまま大きくなったような大貫警部が面白いっ!!
そして、作者のタイトルセンスもよいですね。
洒落がきいていて、驚きます。
ガチガチの作品ではないためにサクサク読めます。
大貫が笑える行動を起こし、事件を解決していくのですが、
実際には大貫ではなく直子だったり。。。
あまりにも面白かったので、シリーズ最初から読みたいと思います。
R.P.G.
そろそろ漫画も読むものがなくなってきたので、
再び推理小説ものに手を出しました。
私が好んで読む宮部さんです。
(ネタバレあり)
R.P.G. ロールプレイング
ゲームをやっている人には身近な言葉だと思います。
そもそも【役を演じる】という意味なんですよね。
なので、テレビゲームでのジャンルとしてのRPGって、
意味合いがちょっと異なってると思います。
もともと、どこから来たのかは、、、
海外で盛んなテーブルトークからの語源でしょう。
自分が役になりきり、ダイスとトークによって進められるゲームです。
2~大多数でやることができます。
日本でも最近はわかりませんが、一時期水面下で流行ったと思います。
ロードス島戦記などが代表的な例です。
前置きが長いですが、この話はテレビゲームとしてのRPGではなく、
役を演じる、、、という意味です。
さて、、感想はというと、、、
正直、犯人は半分くらいからわかっておりました。
そして、見事そのとおりでした。
ネットの世界でバーチャル家族を形成していて、
その中の【お父さん】が何者かに殺されてしまいます。
そして、その【お父さん】の実の娘に顔とおしをさせようと、
マジックミラー越しの取調べ室の中に、
バーチャル家族での【娘】【息子】【お母さん】が現れます。
あとは、どんな背景があったのかという取調室での会話がほとんどです。
【実の娘】は、殺した人=容疑がかかっているバーチャル家族に対して、
怒りをむき出しにしています。
しかし、それは父が殺されたからではなく、
父が現実世界での家族を大切にせず、
バーチャルでの家族を形成していた寂しさと怒りからでした・・・。
最後の最後まで、この話のなかでのRPGというのが、
バーチャルな世界でのことだと思っていたのですが、、、
最後に驚きました。。。
実は、ある刑事がこの実の娘を自供させようとして考えた演劇だったのです。
バーチャル家族は実在している人物なのですが、
名前は全て異なり、配役も新人刑事が行っていたのです。
(説明がややこしいですね・・・)
二つのR.P.G.が混在していたということ
評価は二分されているようですね、このお話は。
だけど、私はとても面白かったです。
スカッと終わらせてくれるお話でした。
しかも最後のどんでん返しがまた良かったです。
宮部さんの話は、とても読みやすいんですよね。
推理小説初心者の人にぜひ薦めたい本です。
ガツガツ最後まで読むことができます。
そして、今日も他の宮部さんの本を図書館から借りてきたので、
さっそく読んでいこうと思います。
迷宮遡行
この本の著者はかの有名な『慟哭』を書いた方です。
慟哭が面白かったので、読んでみようと思ったものです。
(ネタバレあり)
主人公は、気が弱く頼りなく会社もリストラされたばかり。
そして奥さんが突然書置きを残していなくなる。
頼りない主人公だけど、奥さんを思う気持ちは多大であり、
探すことを決意する。
そして、どんどん裏の闇の世界へと巻き込まれていく。
そんなお話です。
うーん、どう評価していいのかな。
サクサク読めます。
話がつながったときは、『あぁなるほど』って感じです。
ただ、主人公の親友がとてもいい人なのに殺されてしまったり、
電話帳で家を探すにしても、最近は非掲載が多いのでは?
と、腑に落ちない思いはします。
そして、、、
何よりも、、、、
後味が悪い・・・。
私は、バッドエンドってダメなんです・・・。
ハッピーエンドとはいかなくても、スッキリするものがいい。
でもこの話って、、、絶望しか残らないなぁ。。。
話の作り方や、終わり方は好きなんです。
主人公が過去の楽しく語っていた思い出で終わるので。。。
でも、結局主人公は敵を殺してしまうし、
自殺を選んでしまうだろうし・・・。
やるせなさがたくさん残るお話でした。
でも、グイグイ読ませてくれます。
ハードボイルドが好きな人にはお勧めです。
また、普通の頼りない主人公が行動的になっていく様も面白いです。
でも、、、
これは最後がいやだなーって思う一冊でした。
貫井さんの書き方、表現はとても好きなので、
また他の本にチャレンジしたいと思います。
理由/宮部みゆき ★★★★☆
たまには活字を読もうと思いまして、ブックオフで物色したのがこの本。
宮部みゆきさんです。
宮部さんの本は何冊か読みましたが、私には読みやすい本です。
この本も分厚いですが、サクサク読めました。
画期的ですね。全てがインタビュー形式で進められていきます。
要するに、事件後に調査している記者が関係者にインタビューしているんですね。
まさしく、周りの外堀から埋めていって、最後に天守閣を攻める!
といった感じです。
こういう形式が読みにくい人もいるかもしれませんが、
想像力を働かせる気がします。この手法面白いですね。
以下ネタバレが少しあります。
結論から言うと、途中で犯人はわかるのですがそれまでを理解するのが難しい。
占有屋というものが存在するのははじめて知りました。
家を売買するだけで、たくさんの問題が出てくるんですね。
競売のしくみもちょっとわかるようになります。
そういう背景を理解できないと読み続けるのは苦しいかな。
ただ勉強になりますよ。将来、家を買うときなどの参考にね。
以前も、自己破産が絡む小説を読みましたが、
やっぱりこういうところで自分の知識が増えていくんだなって思います。
ほんと、この本に登場する人物で、犯罪に関与してしまった人たち、、、
寂しい人ばかりなんだなぁって思います。
ただ、現実味なさそうで、ある話なんですよね。
インタビュー形式なのに、あたりの様子とかも浮かぶんですね。
そして更にインタビューのため、自分はこう思ってたのに、
他人からはこう思われている、こう思っている、という矛盾が面白いです。
母親が息子に対して、息子が両親に対して、、、
現実にもこういうすれ違い多いですからね。。。
これだけ厚い本を読み終わると達成感あります!
外堀を埋めた後、、、中盤からは面白くなりサクサク読めますよ。
これ、映画あるんでしたっけ?
映画はどうなってるのかな~?
『顔面麻痺/ビートたけし著』 ★★★★★
いまや世界のキタノとしても名高いたけしさんの著書です。
タイトルで分かるとおり、94年のバイク事故での入院生活の話。
当時はメディアの情報しか伝わらなかったので、
たけしさんの気持ちや取り巻く人々の様子がダイレクトでわかります。
事故前後の記憶がないことや、弟子たちの付き添い&日記、
そして、自己分析。手術への決断。
復帰会見やテレビ復帰の裏にはそんな事情があったのか、
と思わせる本です。
私がたけしさんを知ったのは『おれたちひょうきん族』です。
それまではずっとドリフ(『8時だよ!全員集合』)だったのですが、
あるとき見てみたらとっても面白かったんですね。
家族中が両方みたいという決断になり、
当時ではいち早くビデオを購入しました。
この本が発売された時も、興味はあったのですが、
そういう裏の面を見ることに不安を感じていたので読めませんでした。
今だから、私も年をとったから(笑)読めるようになりました。
そして、このほかにも『真説「たけし!」オレの毒ガス半生記』という本も読みました。
こちらは生まれてからツービート時のことが書かれています。
リアルタイムではないツービートですが、たけしさんの原点を見たような感じがします。
こういう本を読んでから観る北野監督の映画はまた違った観点になってくるのかな?って思います。
順に観ていくとまた前回評価したHANA-BIも違う感情になるかもしれませんね。
近々借りてこよう。
火の粉 ★★★★☆
久しぶりに文庫を買いました。
最近、楽しい漫画も発見できないので、
駅構内のちっちゃな本屋で1分で決めた本です。
決め手は・・・・
1.上下巻なく、1冊で完結している
2.分厚くて読みごたえありそうだから
3.裁判官が主人公っぽくて面白そう
そんな単純な理由で購入してみたところ、
面白くて先が早く読みたくて2日間(通勤内)で読みました。
読むのが早いのというのがとりえの1つですが、
なかなか良かったです。
感想はというと、、、
推理小説というより、家族崩壊の心理描写が多かったです。
わからないトリックを暴いていくというより、
あるひとつの謎がやっと最後に解き明かされる。
一人の人間の出現により、じわじわと家族が崩壊される不安感。
しかし、絵空事というよりも現実に起こりうるという展開だと思います。
最後にしても絶望感がありますが、その絶望感に混じって、
ほんの少しの安堵感・幸福感というのも感じました。
同時に司法、人を裁くことの重みも少々感じました。
読みきった、という達成感は感じなかったのですが、
途中で飽きさせない構成がすばらしかったです。
ただし、あまり大展開というラストでもなかったので星4つにしました。
この方の他の本、『栄光一途』『犯人に告ぐ』というのも
機会があったら、読んでみたいと思いました。